現世(うつしよ)の向こうから@小説ブログ

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【24】Chapter 1.1 - 5

「おおおおおっ!! 我が華麗な剣技を受けてみよっ!!! <ファスト・スラッシュ>!!」
「まだまだっ! <ラウンド・ブレード>っ!」

 高さ十メートルほどもある大空洞の空間の中でミハエルさんの放った華麗な剣技は、宝箱の中から出現したモンスター<ミミックジュエル・リザード>のHPを二割ほど削っていった。

【24】Chapter 1.1 - 5

「剣士の初期スキルを二つ使うだけで、相変わらず恥ずかしいヤツだな、お前…、いつもの身内だけならまだしも、タビト達がいるんじゃあ恥ずかしさ倍増だ」
<ミミックジュエル・リザード>の攻撃を丸い盾で受けながら呟くグラハムさん。
「いえいえ!俺達のことは気にしないでください!それにかっこいいっすよ!!」
 ミハエルさんはゲーム楽しそうだなぁ…うんうん。
 でも、まだ<ミミックジュエル・リザード>のHPは七割残ってる。油断できない。
(この手のミミック系モンスターって、どのゲームでも大抵強いんだよなぁ)

 ヨードルのほうからまた、小さな呟きの旋律が聞こえてきた。≪アクシズ≫との戦いで聴いた歌の音色とはまた違う、何やら張り詰めた音色。
<千針の歌(スパイニーソング)>―――自分の周囲のモンスター全てに継続ダメージを付与する歌だ。瞬間的な威力自体は微々たるものだが、時間が経つほどに蓄積ダメージは大きくなっていく。

<ミミックジュエル・リザード>のHPが五割を切った時、異変が起きた。雄たけびのような甲高い音を全身から発すると、周りの地面から四体のモグラのようなモンスターが出現ポップした。

『ミスティフモール<Enemy> Lv.23』
 レベル二十八の<ミミックジュエル・リザード>に比べれば、大したことはない…、けど、数が多い。
「新手か!」
「大したことなさそうだね。こいつらはオレらに任せな、グラハムっ」
「分かった。油断するなよ」

 出現ポップした四体の<ミスティフモール>は突然、ヨードルを目がけて一斉に向かって行った。
「ヨードル!?」
「う、わああああああっ、痛い、痛いっ!!」
 四体の<ミスティフモール>の一斉攻撃により、後衛でそれほど防御の強くないヨードルのHPは、あっという間に半分を割り込んだ。

(まずい、ヨードルの<千針の歌(スパイニーソング)>の有効範囲で出現ポップしたから、四体ともにヨードルの初撃が入って敵視ヘイトを稼いでしまったのか…!)

「ヨードル、歌を中断して!今回復するからっ!お二人は<ミスティフモール>の敵視(タゲ)を取ってください!」
「わ、分かった…!」
「任せて!」
 その瞬間、<ミスティフモール>に斬りかかろうとしたミハエルさんより先に、アリサさんが背中から取り出した鞭による横薙ぎの一撃が、四体のうち三体に命中した。
 ダメージ量自体は大したことは無かったが、<ミスティフモール>たちの敵視(タゲ)を取るには十分だった。
 そこから間髪入れず、左太ももから抜いた銃でその内一体に追加攻撃。さらに追加効果として、相手の動きを遅くする『鈍重』の状態異常(デバフ)を付与しているように見えた。
 さらにミハエルさんが、アリサさんが敵視(タゲ)を奪った三体のうち、二体に切りかかっていく。

(ビーストを使役しつつ、鞭と銃での波状攻撃…!獣使い(ビーストテイマー)っていいなぁ…可愛いビーストも連れて歩けて楽しそう。てか、アリサさんがカッコ良過ぎて、とても同レベル帯に見えない)
 俺はまた、ヒーラー職を選んでしまったことへの薄っすらとした後悔を感じつつ、ヨードルに<応急療法(ファストエイド)>をかけ、さらに範囲回復スキルである<治癒方陣(ラウンドヒール)>の詠唱を始めた。

(…実戦で使うのは、初めてだ。詠唱時間は五秒と長い、MPの消費も大きい。…でも、他のみんながそれぞれモンスターと戦ってて、満遍なくHPが減ってる。今がジャストタイミングだ)

 ヨードルは短刀(ナイフ)を抜き、<ミスティフモール>と一対一での近接戦闘を繰り広げていた。
吟遊詩人(バード)≫は歌での攻撃やパーティー補助がメインの職だが、短刀(ナイフ)を装備できるため、近接戦闘でもそこそこ戦えるのが特徴だ。
「…おぉ!ハイエレクトラム武器か。ヨードルは、中々良い短刀(ナイフ)を持っているね!」
 二体を相手にしながらどこか余裕のあるミハエルさんの声は、ただでさえ実戦経験が少なく、初ダンジョンでの初戦闘で必死な表情のヨードルには届いていなかった。
 だが、さすがに武器が良いだけあって、確実に押している。

「よし…<治癒方陣(ラウンドヒール)>!」
 ついスキル名を口ずさんでしまった。詠唱完了と同時に、俺達の戦っている空間は一瞬緑色のオーラに包まれ、俺達のHPゲージはそれぞれ八割から満タンまで回復した。…と同時に、俺のMPは五割を切った。

 そして全体回復とアリサさんたちの奮闘の甲斐あって、<ミスティフモール>四体は全て始末することができた。
 残る<ミミックジュエル・リザード>も、グラハムさんとアリサさんのビースト、一体二の戦いでそのHPを二割まで減らしていた。
「よし、畳みかけるぞ!」
 ミハエルさんの一声と同時に、俺も攻撃魔法スキル<破邪球(セインツボール)>の詠唱を始め、<ミミックジュエル・リザード>に命中させた。

 あと一撃で終わる…その時、<ミミックジュエル・リザード>の金色の身体が発光し、体表面に無数についている宝石のようなものを全方位に向けて弾丸のように発射し、ガラスが割れるようなエフェクトとともに四散していった。
「うおおっ!?」
「きゃああっ!!」
「痛たたたたたたた!!」
「っ痛てええええええええ!!」
 …まさか、死の間際にこんな全体攻撃があるとは。せっかく回復した俺達のHPは、それぞれ三割から四割ほど減少していた。

「つ、、強かったっすね…あはは」
 元はと言えば、俺達二人が宝箱を開けてしまったがための戦闘だったのだ…。ちょっと肩身が狭い。
「ね、、タビト。以後、気をつけまっす…」
<ハイエレクトラム・ナイフ>を腰に納めたヨードルも、同じ気持ちのようだ。…しかし。

『ミミックジュエルの鱗×3を手に入れた』
『モールの毛皮×2を手に入れた』
『ハイシルバー・リングバンドを手に入れた』
 俺の目線の高さのやや上方に、こんなシステムメッセージが現れた。

「ドロップアイテム…!?」
「ふむ…」
「へぇ、、コイツこんな物をドロップしたのね。宝箱は、危険なものは避けてたから気付かなかったわ…」
「みんな、それぞれドロップしたものは違うのかな?」
「オレはミミックジュエルの爪と、モールの牙。それと首飾りの装備だな」
「ははは、こりゃあ敵の潜んだ宝箱は全開け決定だな!」

 俺達はそれぞれ入手した装備品を身に着け、さらに大空洞の奥へと進んでいった。