現世(うつしよ)の向こうから@小説ブログ

Web小説やネトゲの話、副業の話などなど

【21】Chapter 1.1 - 2

「ところでヨードルって、スキル枠には何をセットしてるんだ?窃盗と探索と…」
「しっ、タビト、声が大きいよ!…生産スキルなんかは別として、スキル枠に何をセットしてるかっていうのは、普通他人には教えないものなの。特に、僕があのスキルをマスターしてるなんてことは、絶対他人に知られちゃいけない」
 ヨードルがひそひそ声の強い口調で俺を非難する。
「あ……そうか。ごめんヨードル」
 冒険者ギルドは絶えず人の出入りが激しいため、どこで誰が会話を聞いているか分からない。ましてPK(プレイヤーキル)の可能なこの世界なら、なおさら自分のセットしているスキルの秘匿性に気を遣わなければならないだろう。

【21】Chapter 1.1 - 2

「…俺はスキル枠、三つまでは決めたんだけどさ。あと一つを何にしようかなーっと思って」
 スキル案内所に備え付けられた、スキルの簡単な解説が書かれた冊子を開く俺。
 所詮、初期スキル。大して深く考えずに決めればいいのかもしれない。
 ヨードルの窃盗スキルや探索スキルは、どうやって習得したのだろうか。そんなことを考えていると…。

「今決めきれないようだったら、無理に決めずに進めるっていう手もあるよ。ほら、一回スキルをセットして、マスターする前に外しちゃうとスキル経験値が無駄になっちゃうし。…あっ、でもとりあえず、ステータス上昇系スキルで埋めておけばいいんじゃない?」

 確かに、ステータス上昇系のスキルはマスターしやすいみたいだし、仮にマスター前に外すことになったとしても、外すまでの間はちゃんと恩恵を受けられているのだから、セットしない手はない。

「うーん…、うーん…。そうだな。スキル枠も増やしたいし…埋めてしまうか。そういえばスキル枠を増やすのって、いくつくらいのスキルをマスターする必要があるんだ?」

「えーっとね、確か…僕もまだスキル枠は四つなんだけど、ジュードさんに聞いた情報では、スキル枠を五つに増やすための条件はスキルを五つマスターすること以外に……なんだっけ」

 俺もヨードルも、まだまだ駆け出しの冒険者だ。お互い、ソウルズのシステムには明るくない。

「スキルのマスター数を満たした状態で、誓約の石(プレッジストーン)を入手してここの受付の人に話しかければいいよ!」

「え?」
「あ!そうそう、それだよ…って、え?」

 突然のアドバイスに驚いた俺達の目の前には、赤と青の軽鎧プロテクターを装着し、白いコートに身を包んだ黒髪のハーフエルフ族が立っていた。
 長身のさるとび師匠とは違って、こっちのハーフエルフの男はヒューマンの俺より少し高いくらいの背丈だ。
「あぁ、ごめん。驚かせちゃったね。初心者さんっぽい感じだったから、つい」
「あ、いえ、教えていただいて、ありがとうございます」
 一応、ハーフエルフの男に礼を言った。この人は、上級者なのだろうか。ターゲットしてステータスを見てみると…。

『ミハエル<Player> Lv.26 剣士』

(俺らとほとんど同じじゃん!初心者さんっぽい感じって、なんか上から目線だったけど!?)

「オレはミハエル。剣士をやってる。前にやってたネトゲを引退して、二人のフレと一緒にこっちに来た。まだレベルは低いけど、早く最前線で強力なモンスターと戦ったり、難解なレイドダンジョンをガシガシ攻略したいと思ってる!…あ、おぉい!こっちこっち」

 熱い自己紹介をするミハエルに声をかけられて、二人の男女と羊のようなモンスター?がこっちに向かってくる。

「ミハエル、…またナンパ?さっきフラれたばっかりでしょー。しかも今度は男!前のネトゲでもやたら男とつるんでたから怪しいと思ってたけど、あんたって…」
「ア、アリサ!初心者さん達に変な誤解を植え付けるんじゃない!」
「別に悪いことじゃないわよ?愛の前では性別なんて無意味」

『アリサ<Player> Lv.25 獣使い(ビーストテイマー)
(紫髪のゆるふわウェーブヘアの女性。…ハーフキャット族か。目もちょっと釣り目だし、ちょっと性格キツそうだな。太ももに銃、背中に鞭を装着してる。この漂うSっ気が凄いな…。連れている羊は可愛すぎてどう見ても戦闘タイプに見えないけど、使役しているモンスターなのか…?)

「お前も懲りないね。別に直接スカウトしなくても、このゲームにはパーティー募集機能っていう便利なシステムがあるんだからさぁ…」
「ダメだ!あんな便利なシステムに頼っていたら!パーティーメンバーは足で探す!これネトゲで忘れちゃいけない心!」

『グラハム<Player> Lv.27 闘士(ファイター)
(短い茶髪、顎ヒゲのハーフウルフ男。ハードボイルドな感じがする。煙草が似合いそうだ。≪闘士(ファイター)≫は確か、壁役タンクの初級クラスだったな)

「というわけで、どう?他にアテが無かったらオレらとパーティー組まない?やっぱりレベリングやスキル上げは、みんなでパーティー組んでワイワイと狩りだぜ!」
「キミ、スキル探してたの?しょーじき最初は生産系と採集系以外、何選んでも大して変わらないから、テキトーにステータス上昇系スキル入れとけばいいよ」
「タビトとヨードルか。俺達は前のネトゲから、いつもこんな感じなんだ。ま、よろしくな」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

(この唐突な出会いからいきなりパーティー組んで狩りに出かける、ネトゲやってる感ありありだ。俺達は閉じ込められてるから、ネトゲと言っていいかは微妙だけど…。この人たちはログイン組なんだろうなぁ)

「よろしくおねがいします!…タビト、とりあえず<入門書>を買って、スキル枠をセットしてきなよ」
「あぁ、そうだな。すいません、ちょっと行ってきます!」
「あ、タビト君!クエスト案内から、受注上限までクエスト受けるの忘れるなよ!報酬ショボいけど受けないよりマシだから!」
 ミハエルさんのアドバイス。なるほど中々の世話好きのようだ。…同レベル帯だけど。